止まらない円安の原因は日本人の米国プラットフォームへの課金・だからってどうすることもできない

「円安ドル高が止まらない」この一因に、実は「私たち日本人が日ごろ使っているプラットフォームへの課金」が積み重なっていることが挙げられます。

google、amazon、Meta、AppleそしてNet flixなど日本人の日々の生活に欠かせないツールを提供しており、その課金額は半端ない額になっているわけです。

ここでは円安と特にアメリカのIT企業とのかかわりを明らかにしていきます。

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止まらない円安ドル高の背景にあるのは金利差だけではない

2024年現在円安ドル高は止まらず、この要因として日米の金利差が挙げられることが多いです。

左下の表のように日本円と「米ドルの為替差・日米間の利回り」は強い相関関係にあります。

円/米ドルレートと日米の金利差 (野村アセットマネジメント)

日米の金利差が日本円と米ドルの為替差に与える影響はおよそ半分程度(0.49)と言われていましたが、2022年以降ではこの決定係数が0.85になってきており、確かに日米の金利差抜きには円安ドル高は語れません。

アメリカの金利を下げる方向で調整中というニュースはたびたび耳にしますし、一方日銀は17年ぶりのマイナス金利解除を決めており、これで日米間の金利差は縮小されていくようにも思えます。

しかし、端的に日米の金利差だけで円安ドル高が進行しているかというとそうでもなくなっているのではないか?というのが本稿のテーマです。

それが貿易赤字の拡大にあるのではないかと考えられるのですが、背景から探っていきたいと思います。

円安の一因には貿易赤字の内訳にあり

円安ドル高を考える上で、「円がどれだけ買われているのか」を考える指標として経常収支が参考になります。

経常収支は海外との貿易・配当利子がどうだったかを記録したものです。

財務省

貿易収支赤字の要因 1ドル
2011年 福島原発事故の影響で火力発電の稼働が多くなり、燃料・天然ガスの輸入が増加 70円
2013年 福島原発の再稼働が延び、さらに円安が加速し燃料や天然ガスの輸入がさらに増加 100円
2022年 海外へ投資したまま外貨として温存されている額・海外のプラットフォーマーへの課金の増加 132円

上のグラフのとおり2023年日本は経常黒字幅として20兆円が出ていましたので、一見円高に傾いてもいいように思えます。

しかし、2024年に至っても円安米ドルは進行しており円買い増加には至っていません。

ココがポイント

2023年の貿易とサービス収支赤字は増え、10年前の経常赤字とは訳が違ってきている・明らかに円の需要は悪化しました。

2022年の経常収支に見られる「円の需要の悪化」を詳しく見て行くために、今度はキャッシュフローベースの経常収支を参考にしたいと思います。

日経新聞

貿易サービス収支の赤字が目立ちます。

貿易収支に関しては、輸入の3割はガソリンなどの燃料と言われる中でさらに燃料の高騰が続いていることが赤字に拍車をかけています。

サービス収支には旅行・輸送・その他のサービスがあります。旅行はインバウンドで外国人が日本という場所そのものに魅力を感じたり円安でお得感を感じながら増えてはいます。

しかしコロナ後で爆上がりしたインバウンド旅行がもたらす黒字をもってしても赤字が解消されていません。

「その他のサービス収支」の赤字を「新時代の赤字」と呼ばれたりするのですが、この具体的な中身は何なのか?

その他サービス3分野 具体例
コンサルサービス googleやMETAなどのインターネット広告などプラットフォームへの課金・国際試合のスポンサー料金
研究開発 研究開発の取引・特許権などの知的財産権
技術・貿易・その他 理系の技術サービス、農業や貿易関連サービス。

2023年のインターネット広告費は3.3兆円と巨額でした。googleの検索キーワード連動広告やMETAやアマゾン内でネット広告を見ない日はありません。

電通

それではここからプラットフォームへの課金について深堀していきます。

貿易赤字の一因となっているIT企業の問題点

朝日新聞

GAFAと呼ばれるgoogle、FACEBOOK(META)amazon 、appleのビックテックは、世界中の国々にオンライン上でサービスを提供しています。

ECサイトであるアマゾンについては「逃税」と言われるほどかなり目立ちました。

以下がアマゾンジャパンと米国アマゾンの違いです。

  • Amazon.co.jp:日本に拠点を置き、「アメリカ法人のアマゾン」が運営する子会社の位置づけ
  • Amazon.com, Inc.:アメリカ法人が運営するECサイト

アマゾンは1998年に日本国内で株式会社設立、その後アマゾンジャパン合同会社へ変更されています。

東京目黒区を拠点とするアマゾンジャパンは2009年の国税局から追徴課税を課され、かなり目立ったニュースとして知られています。

ポイント

アマゾンジャパンは米国アマゾン本社から業務委託される形で行われており、なんと日本国内での売り上げと利益の多くが米国アマゾン本社へと数字が動いているような仕組みになっていたのです

アマゾンで言えばこれが「日本からアメリカへお金が流れている実情」です。

このため日本国内のアマゾンジャパンでは納税がほとんど行われておらず、国税局が現実に見合った納税を促したと言われています。

アマゾンの売り上げに関しては、コロナを境目に売り上げがまたまた飛躍的に伸びています。

アマゾンジャパンの売り上げ推移

  • 2017年:1.3兆円
  • 2019年:約1.7兆円
  • 2021年:約2.5兆円

ココがポイント

この金額の多くが米国アマゾン本社へ流れて行っているわけですから、これも円安を加速させている一端と言えます。2.5兆は看過できないでしょう。

アマゾンを取り上げてみましたが、他のビックテックに関しても似たり寄ったりなところはあります。

かといってグーグル、メタ、アップル、アマゾンのようなビックテックに匹敵するIT企業が日本に存在しているかというと、代替するようなサービスを提供する企業は皆無。

これが円安ドル高を一層深刻にしている「構造的な理由で引き起こされている円安ドル高」と言われます。

構造的な要因で円の需要が落ちている(円安)わけですから根深いです。

2024年4月末に10兆円近い為替介入が行われたものの、連発するものでもなければ長い効果を期待できるわけでもない、その場しのぎは変わりません。

なんだかんだ言ってしまって円高ドル安は今後も続いてしまうでしょう。

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LCFPO

公認会計士事務所での決算業務実務経験を経て、FPとして受けた相談件数は18000名以上。契約の継続率・販売力・商品の品質に関するインターナショナルクオリティアワードを受賞。ほか受賞歴や業界内の取材受注多。現職は資産形成・不動産投資案件やインフラ契約のご相談を承るオフィスの代表FP、事業家。くわしくは「about」よりどうぞ。