ここでは日米間の円高ドル高の背景や原因を探る上で、現在の日本とアメリカのこれまでと現状、そしてこの先について明らかにしています。参考にされてください。
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2024年7月急な円高ドル安の背景・何が原因?
7月に入ってからアメリカ株の大量売りが起こり円高ドル安に動きました。
アメリカ株500社の株価に連動しているS&P500については約1年ほど2%超の下落がなかったために混乱が起こっています。日経平均については後述するとおり円安から円高に一転するたびに急落しており、ボラティリティが激しいです。
いずれにしても円安にブレーキがかかっています。
急激な円高ドル安にはどんな背景があって何が原因なのでしょうか?それには3つ挙げられます。
- 【一番濃厚】投機筋によるポジションの解消
- アメリカ大統領による言動
- 政府日銀による為替介入
【一番濃厚】投機筋による円売りポジション解消
ココに注目
急な円高ドル安の原因として一番注目されているのが投機筋による円売りポジション解消です。
下の図を見ると2023年の春と年末に円売りポジションが減少し一時的に円高に反転する動きがあったものの、2024年7月に至るまで円売りポジションが積みあがっていました。
2024年7月に入ってからの円高ドル安の動きは、円を買ってドルを売る動きが大量に発生したことが理由ではないかと考えられているようです。
なぜドル売りと円買いが起こっているのか。7月2日の神田真人財務官の発言にもあったように投機筋の動きというのは確かでしょう。
後述するようにその投機筋はアメリカのハイテク株の激しい値動きから、ドルを売って円を買わざるを得ないといったところにあるように思います。
アメリカ大統領による言動
アメリカ大統領による言動は円高ドル安に大きな影響を与えるようです。
2024年秋に大統領選が予定されており、これまでドナルドトランプ氏とバイデン氏の一挙手一投足に注目が集まりました。
トランプ前大統領
- 再選されたらFRBに利下げを要求する可能性がある(金利の引き下げはドル安を招くゆえ、金利引き下げの前にドルを売却しておきたい動きが強まる)
- 氏のドル安思考から政治的に円高圧力が高まりやすい(影響があるだけで大統領に為替を操作する実権はない)
- 財政支出の強化の意向
- 中国に対して関税強化の意向
1~3を行えばインフレが起こりやすくなりますが、しかしトランプ前大統領は「インフレも金利も抑制したい」といった姿勢で、矛盾を含んでいることがさまざまな場で指摘されています。
とは言えトランプ氏は失言があろうとほぼダメージがないキャラで、ある意味強いです。銃撃事件で負傷を負いながら命を取り留め「無敵無双」をイメージさせるアメリカと重なった気すらします。
バイデン現大統領
- 対中国に対する半導体の輸出規制を強化
- 1により半導体関連株の株価が下がる
後述しますとおりアメリカ株は半導体関連のテック株がこれまで牽引していたため、影響があっても不思議でもありません。
さらに不法移民問題や中国によるペトロダラー離脱の動きから米中の対立はデットヒートになっており、鎮火しないのではないかと思われるほどです。
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政府日銀による利上げや為替介入
日銀は7月末に金融政策決定会合を予定しており、利上げについての議論が注目されるているようです。
ココに注目
後述しますとおり7月12日に日銀による為替介入が行われたのではないかと見られており、それ以降は円高が進みました。
利上げとさらなる円高が起こる前に円買いが起こったとも考えられます。
そもそも論
2024年7月に起こった円高ドル安を考える上で、以下のような前提を踏まえておきたいところです。
- 日米間の為替変動が金利差だけで起こっているわけではない
- これまでのアメリカ経済を牽引したのはNVIDIA
- アメリカで起こっていること:インフレ・雇用・経済にまつわる指数
- 日本株の動き:わかりやすくお得な円安で日経平均株価が上がる
日米間の為替変動が金利差だけで起こっているわけではない
これまで円安ドル高傾向で動いてきた日米の為替の動きについては、日米間の金利差の影響が強く言われていました。
以下の図のとおり、日米の金利差と為替に相関関係が”あった”のは誰もが認めるところです。
しかし6月に入ってから日米の長期金利差が縮まったにも関わらず以降円安ドル高進んでおり、いつもとは違う動きをしていたのは確かです。
以下で詳細をお伝えしていますとおり、貿易収支のうち「日本人がアメリカのITプラットフォーマーに課金する額が巨額ゆえ」日本円でアメリカドルを購入している額が増えている(つまり解消し難い構造上の問題で円安進行)と言われています。
アメリカは利下げ、そして日本では利上げを免れないと考えられていますが、しかしながら2024年内で二国間の金利差が大幅に縮小されるわけではなく、引き続き5%前後の金利差は残り続けるでしょう。
つまり、二国間の金利差は大きく縮まるわけでもないし、替相場への影響が金利差だけで起こっているわけではない、というのが実情です。
これまでのアメリカ経済を牽引したのはNVIDIA
世界の時価総額上位を見てもアメリカ企業は上位30社のうち20社が占めています。どう見てもアメリカ経済の強さを実感せざるを得ません。
この中で2024年7月まで大きくアメリカ株を牽引してきたのはNVIDIAであり、半導体やその技術を応用したAI関連サービスへの期待値からその株価が上昇してきました。
NVIDIAの株価は以下のとおり猛スピードで上昇してきました。高値を付けた2024年6月20日は2月の倍近くとなっています。
2024年7月に来てテック関連株が大量に売られ始めた背景は、AIに対する不安です。
AIは果たして役に立つのか?つまりAIを使ってキャッシュ化できているのかが不透明で、株を保有していても不安だからテック関連株を売却して現金化しようとする動きが強まっているようです。
上がりきった株の上昇が続いていれば調整期が訪れるのは何も不思議な事でもありません。
不安定で不透明なものは嫌がられるのが市場。独走状態だったNVIDIAをはじめとしたテック関連株に転換期が訪れたとも言えます。
一方テック関連株の大量売却が起こったからといってAI関連サービスがこの先伸びないかと言ったらそれはまた別な話。
ココに注意
アメリカで起こっていること:好調が鈍化
アメリカではコロナ後インフレ率が高まり、2024年では3.5%程度を維持しています。
nhk.or.jp
ココに注意
それでは好調に伸びてきたアメリカ経済を背景としたインフレは終息しないのでしょうか?(アメリカの政策金利は高止まりのまま?)
アメリカ経済と物価上昇インフレについてデータを見て検証してみましょう。
アメリカの雇用者は増加、失業率は4%程度を推移しており、人手不足で労働需給は締まっており、「好調なアメリカ経済は鈍化」の印象です。
nhk.or.jp
- 非農業部門雇用者の前月比増加幅:20万6000人増
- 失業率:4.0%から4.1%に上昇
- 賃金の伸び:4%を下回る
また、以下はアメリカの製造業およびサービス業にまつわる経済指標の一つMISで、アメリカ経済の状況を図る上でよく引用されています。
50を上回れば好調、下回れば経済が縮小傾向にあると判断されます。
- Manufacturing PMI 製造業48.5%:3ケ月連続で下がっており、製造業全体で縮小傾向にある
- New order新規49.3%:あらたな受注は生産の増加を予期させる指数。やや増加傾向。
- Employment雇用指数49.3%:鈍化傾向
ココがポイント
決定的に景気が減退しているわけでもなく、どちらかというと好調が鈍化したといった印象を受けます。
アメリカ経済を特徴づけてきたのは高所得層の消費。このところルイヴィトンなどを率いるハイブランド取扱い会社LVMHの上半期の決算は高級品の売れ行きが芳しくなかったことを物語っており、ここから高所得層の消費が落ちたことも推測できるかもしれません。
日本株の動き:わかりやすくお得な円安目当てで日経平均株価が上がる
米ドルと日本円為替レートを見る時、円安が進むたびに日経平均株価が吊り上がる傾向があります。
↓2024年の値動き | 日経平均 | 円ドルレート |
3月22日 | 40,888円 | 151円 |
4月19日 | 37,068円 | 154円 |
4月30日 | 38,054円 | 157円 |
5月1日 | 38,274円 | 154円 ※日銀による為替介入効果 |
5月2日 | 38,236円 | 152円 |
6月30日 | 33,189円 | ↙160円 |
7月3日 | 40,580円←↙ | ↙162円 |
7月4日 | 40,913円←↙ | ↙161円 |
7月12日 | 41,190円←↙ | 157円 ※日銀による為替介入 |
7月27日 | 38,900円 | 154円 |
6月30日の160円台の円安を受けて日経平均株価が上昇したのは、円安が進んだのを見て投機筋が日本株を購入した動きと見られているようです。
そして7月11日にアメリカが消費者物価指数CPIを公表した直後の12日、円高へ一転しました。日銀による為替介入が行われたのではないかとも考えられています。
ココがポイント
12日円高に一転したことによりその後日本株が急落しており、円安で日本株買いが増え円高で日本株売りが増える傾向が続いているようです。
とにかく安い日本円では、日本株がお得感が増して割安に感じられることが多く日経平均は上昇しやすいです。
日本における日米間の為替や金利についての動き
- 7月2日 鈴木俊一財務相により為替についてノーコメント発言
- 7月2日 神田真人財務官の退任発表時、日米の為替の動きについて「投機筋の動き」だとコメント
- 7月3日 1ドル162円
- 7月30日 日銀による日銀金融政策決定会合の予定。利上げについての議論が注目される
個人がとるべきスタンス:このまま円安進行は必須
アメリカの景気の好調が鈍化したのは確かかもしれませんが、不景気のどん底へ突き進むようなことはありえないと考えられています。
ココに注意
2024年7月に起こった円高ドル安の背景や原因の真相をまとめると以下のとおり。
- 上がり切ったテック株について、AI関連サービスの先行きの不透明さが不安になり、売りが増加。これは過剰な期待値が除かれて調整に入り正常に近づいているだけと考えられる。
- 1の影響でアメリカドル売りが増加、その結果日本円買いが増えて円高が起こる。
- テック関連株の暴落は「期待値への調整」の意味合いが大きい。一方で依然としてITプラットフォーマーへの課金が膨らみ続け円安は止まらない。
アメリカ経済が鈍化すると必ず次なる覇権国や基軸通貨の担い手として中国が注目されます。
不動産業が国の3-6割を占めていたと言われるバブル崩壊後の中国経済はガタガタで、報告されている数字よりももっと酷い可能性が高いです。※お国柄フェイクが多い
ココがポイント
アメリカ経済の鈍化が起きようと、中国に覇権が渡るなど当面の間ありえないと言われるのはそうした理由にあります。
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